第11回東京・荒川市民マラソン(3)
スタート直後に脚が重く感じることは,今までもあった。
ただ,徐々に体が温まるにつれて,軽くなってくるものである。
5km地点の岩淵水門32分50秒。キロ6分か。依然として脚は重いままであり,後続ランナーに抜かれるばかりだ。
後悔した。
練習不足を後悔したのではなく,一週間前に四国に行ったことを後悔したのではなく,一昨日に深酒したのを後悔したのではなく,
レースに参加したことを後悔した。初めてだ。
この先,35km以上をどうすりゃいいのか。
第1給水,第2給水ともに通過し,何とかしてロスを減らそうと考えた。
太陽はバッチリ出て,気温が上がってきた。サングラスをしていて良かった。
第3給水でスポンジを二つ取る。顔と首筋を濡らし,続いて太腿を濡らす。間違えて太腿から塗らしてしまうと,顔にサロメが付いて大変なことになる。冷たくて気持ちいい。ありがたい。
10km地点の扇大橋1時間2分。ロスを少し縮めたか。しかし調子は上がらないなあ。
第4給水でザバスを飲む。以後は給水をマメに取るようにしよう。
15km地点の堀切橋1時間32分。お,なんか脚が軽くなってきたぞ!コース幅が狭くなる千住曙町橋梁も,歩くことなくスムーズに通過できた。前々回はここで歩いたなあ。
しかし,調子よく感じたのも束の間。カエル(青ゼッケンということは陸連登録者?)やサラリーマン(スーツを着て,ネクタイも締めている。さすがに革靴ではなかったが)やケツ丸出しランナー(もちろん,本当にケツを出しているわけではない。おもちゃのケツが付いているランパンを穿いている)などの,仮装ランナーに抜かれていく。
かなり凹む。
そんな私にお構いなしに,警備の人たちがソワソワと動き始めた。もうトップが折り返してくるらしい。
第7給水でブドウ糖をかじる。効くんかなあ。
折り返し地点2時間4分。前回は2時間をきっていたし,この時点ではかなり体が軽かったことを覚えている。折り返してピッチをあげたくらいだ。しかし,今回は「やっと折り返しだ。」と半泣き状態。
もうサブフォーはあきらめ,自己ベストの4時間10分以内を目指すことにする。
23kmの第8給水でアンパン4分の1を食べ,ザバスを飲む。ここからは,給水時だけは歩くことになってしまう。
25km過ぎの第9給水でバナナを食べ,水を飲む。あと17kmか。もうここからは1kmごとにカウントダウン。長いカウントダウンだ。
京成押上線のガード下あたり,男性が変なボードを持って声援をおくっている。ボードには,エド・はるみの似顔絵に『今日もたのしく,ランニン・グ~!』とメッセージつき。うちの子供がエド・はるみの物真似をしたときの姿が浮かび,思い出し笑いをしてしまった。笑わすなよ…,笑うのもエネルギー消費するんだよ。でもリラックスできたよ,おじさん,good job!
第11給水。荒川静香の「金芽米」で作ったおにぎりを食べる。前々回のときには,もう全て食べられて撤収作業をしている最中だった。「あのおにぎりを食べるぞ。」,と思って辿り着いた者にとって,こんな悲しかったことはない。
このあたりから,歩き始めるランナーも増えたため,私が抜いていくことが多くなった。
前のランナーのTシャツには,背中にこんな文句が書いてる。
『苦しい時こそ楽しい時』
苦しい時は…,苦しいだけだろ…。毒づいてもしょうがないか。
30km地点の西新井橋下流3時間10分。あと12kmを60分は無理だ。あー,もう自己ベスト更新もダメか…,こう思った時点が一番キツかった。目標を失った気がした。
33km地点の第12給水。残り10kmを切ったぞ。クリームパンを2分の1とザバズ。クリームパンがメチャクチャ美味い。
給水では歩くが,決して止まることなく,給水が終われば走り始める。「次の給水までは走り続け,絶対に歩かないことにするぞ。」そんな約束を,誰かとしたわけではないが,この約束を守らないと,子供に「お父さん,フルマラソン走ったぞ。」と言えない気がする。給水では歩いているのだが…。ただ,自分の中で,そう約束した。
マラソンは30kmから,あるいは35kmからと言われるが,本当にそう思う。脚が痛くなることは当然だが,私は腰が痛くなってきた。姿勢を支える背筋や腹筋が弱いのだろうか。
35km前後だったか,荒川名物のシャーベット。前々回はここで座り込んでシャーベットを堪能してしまった。今回は,シャーベットを食べるが,前に進む。給水地点が終わってしまうので走り出さなければならない。残りをかき込む。歯にしみる。
再度,土手にあがり,遠くに岩淵水門が見えてきた。荒川名物の風はほとんど無い。
土手上は狭いせいか,応援する人は少ない。そんな少ない応援者のなかに,足元にラジカセを置いた男性が一人。ラジカセから聞こえてきた音楽は…
「ロッキーのテーマ」!その瞬間,頭の中からジュワジュワ~っと何かこぼれ出てくるような感覚を味わった。アドレナリンか?一昨日のギネスか?
泣きそうになった。なんでこんなに感動するのか。ヘナヘナにしおれそうな気持ちを奮い立たせるのか。脚にも力がみなぎり,ロッキーがフィラデルフィア美術館の階段を駆け上がるように,荒川の土手を疾走した。15mくらい…。
やっとの思いで右手を上げておじさんの声援に応えた。おじさん,good job!
アドレナリンも枯渇したので,岩淵水門を越えたころには,もうヘロヘロだった。この先,もう一度土手を下るのだが,ここまで来ての下り坂は拷問だ。
okuと子供は応援に来ただろうか。暴風の中の前々回とは違って,今日なら待ってられるかな。今頃,屋台の焼きソバでも食べてるかな。焼き鳥かな。ラーメンかな。俺は,焼きソバと焼き鳥をつまみながら,ビールをグビっと,などど妄想しながら進む。サブフォーを狙いながらも,自信がなく「4時間から4時間半でゴールするよ。」と話していた。予告どおりになりそうだ。
40km。やっとこの数字を見ることができた。残り公園1周半分だ,と自宅近くのコースを思い浮かべる。どんなに時間がかかっても,もう30分も走ることはないのだ。
しかし,脚が上がらない。周りのランナーも歩く人のほうが多いくらいだ。フラフラの人,立ち止まってストレッチする人,座り込む人。私はとにかく走る。
見えた!戸田橋だ!コースの両脇を,ランナーの家族や友人が埋め尽くしている。みな知らない人ばかりなのに,私にも声をかけてくれる。こんなに大勢の人がいて,okuや子供は見つかるかな。サングラスかけてるとは言わなかったしな。
と思いきや「お父さん!」とokuの声。おっ,見つけられたか。「脚がツラそう。」とoku。子供も応援してくれているが,顔つきは何やら心配そうだ。「キツいよ。でも,ありがとう。」と右手を上げる。
もう,ゴールゲートが見える。両脇の声援は更に大きくなってくる。
あれ?お義父さんだ。応援に来てくれたんだ。「おお,よくやった,よくやった!」と満面の笑み。思わず帽子を取って,「ありがとうございます。」と普通に挨拶。
ああ,やっと終わるよ。辛かったよ。マジ泣きそうだったよ。後悔してから35km以上も走ったよ。
最後は,ポーズをキメないとな。両手を挙げてゴール!ここだけは,選手なみ。
結果は4時間21分。
サブフォーどころか,ベストより10分以上遅いタイムだった。
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コメント
いやあ、ネタ切れどころか感動作じゃぁありませんか!
泣きながら読ませてもらいましたよ。
こっちなんか、19年越しでJR四国855.2kmを完走したのに、ゴールの東京駅には誰も出迎えてくれませんでした
ところで、このまえ乗った「なはりこちゃん」から「ごめん」までが42.7km。走って行けば良かったじゃない。つぎはほんまもんの四国遍路しますか?あと87カ所ですけど。あ。しまなみ海道が先ですね。
投稿: 鉄まんアトム | 2008年3月22日 (土) 15時26分
今度は是非応援に行きたいから予定を教えてくださいね
投稿: ANEGO | 2008年3月24日 (月) 08時42分
「しまなみ海道100kmウルトラ遠足」という大会があります。今年は,6月7日開催のようです。
鉄まんアトムさんとは,サイクリングしたいですね。自転車では負けそう。
投稿: ヤッジー | 2008年3月26日 (水) 10時36分
ANEGOさん,鼻水をたらして,口が半開きで,悶絶している姿は見られたくないので,応援しないでください(笑)
4月は,2レースに出る予定です。
まだ随分先ですが,今年の上尾or所沢は,一緒に走りましょう。
投稿: ヤッジー | 2008年3月26日 (水) 10時40分